Home | ArchiveList | About

お知らせ

(2016/02/07) 百物語の元ページの消去にともない、サブカテゴリを削除。
(2008/10/06) RSSの自動読込が変だったので修正。
(2008/09/17) 小説『DEATH NOTE』は連載開始時期になったら、記事復活の予定。早ければ年内、遅ければ年明けくらいに、もしくは夏がまた訪れる頃には。
1 2 3 4 5 > >>
本編は√Letterの公式には存在しない、オリジナルルートの第9章、第10章として記載されている。

そのため、事前に公式のルートをクリアした後に、本編を読むことを推奨する。

なお「性的、わいせつ的、暴力的、差別的な表現、その他、読者に過度の不快感を及ぼすおそれのある作品」であるかもしれないため、それらを許容出来ない限りは、本編を読まないことを推奨する。

√Letter 生誕祭ルート のみを閲覧
松江を訪れて九日目。
夕方、文通相手の七人のクラスメイトに会う。
それまでに、まだ読み返してない手紙を見ておこう。
彼女から送られた九枚目の手紙。
天使の便箋の手紙だ。
消印は一月十一日。
松江を訪れて十日目。
文通相手の所在は不明のままだ。
しかし今日は俺のもとに迎えが来るということらしい。
それまで部屋で待ち続けるしかなさそうだ。

そういえば、読み返してない手紙がまだ一通あったな。
蝶々の便箋の手紙だ。
彼女から送られた十通目の手紙。
消印は二月二十九日か。
最後の手紙を読む。
そしてその夜。

この国を今後大きく変える存在が、命の種子を得た。

まだそのことを知る人間はいない。

永遠の愛を誓った、男女二人以外には。




√Letter rule √13 root is closed.
明日はちょっとひと仕事あるから、気晴らしに先輩たちと飲みに行った。そこまではいいんだけれど、飲み過ぎたせいか調子に乗り過ぎた……かもしれない。飲みでいい気分になりすぎたせいか、その後に行ったゲーセンで、格ゲーでいつもみたいに接待プレイせずに、思いっきり先輩たちに連勝し続けてしまった。

「同時押しはしっかりしないとダメですよ〜! 確反を逃しちゃダサいっすよ〜!」

先輩たちは大人なので、特に怒鳴ったりとかはしなかったけど、不機嫌そうにしていたのは間違いない。酔っぱらってる後輩に負け続けているという表向きの事実だけでなく、今まで手加減されてたという真実も分かってしまったわけで、不機嫌にならないわけがないだろう。

しかしその時の自分は酔っていたので、そんな単純な他人の心も想像しえなかった。むしろ明日の憂鬱な仕事のことを考えると、酔って今だけでも良い気分でいたかったのかもしれない。手元は意外としっかり動くけれど、足元はだんだんと心もとなくなってきたなぁ、と思っていたら先輩たちが家まで送ってくれた。

家に着くころには少し冷静になっていて、「あんな失礼な事をしたのに、先輩たちは大人だなぁ」と思いつつも、その気持ちを口に出すのも謝るのも気恥ずかしくて、送り届けてもらったお礼だけ言って、家に帰りつくなりシャワーもあびずにそのままベッドに倒れこんだ。その頃には明日の仕事のことを思い出していたけれど、なるべく考えないようにして、枕に顔をうずめているうちに、いつしか意識が薄れていった。

翌朝はとても晴れていたが、心は晴れやかとはいかなかった。しかし誰かがやらないといけない仕事だから、と自分に言い聞かせて職場へ向かい、先輩たちと手分けして淡々と作業をとりおこなっていく。お経を聞き、目隠しをし、絞首台の上に連れて行き、両手を縛り、ロープを首にかける。ここまで終えると、先輩たちと3つのボタンの前に並んだ。久しぶりだったが、死刑囚も暴れずおとなしいし、つつがなく作業は進んでいる。うん、順調だ。少しだけ目を閉じて深呼吸をし、合図をまつ。

そして時がきた。

迷わずに目の前のボタンを押す。

しかし、目の前の死刑囚に変化はない。揚げ板がそのままで、死刑囚は吊られていない。何か様子がおかしいと気配を察したのか、さきほどまで落ち着いていた死刑囚が少し慌てている様子が見える。

慌ててるのは自分も同じだった。おかしい。三人ともボタンを押しているのだから、誰か一人のボタンが作動している筈なのに。何かの間違いで、三つのボタンどれもがダミーになってたり、壊れているせいで、揚げ板が開かないのだろうか。

どうすればいいのか先輩たちに相談しよう。そう思って横を向くと、先輩たちは二人ともじっと無表情のまま前を向いたままだった。なぜ絞首台が作動してないのに、こんなに落ち着いてるんだろうか。心に何かが泡立つものを感じつつ、つい先輩たちの指先を見てしまった。

二人ともボタンを押して、いない。

合図をしてる方向から見ると分からないが、横から見てる自分にはわかる。微妙にボタンから指がずれている。二人ともボタンを押しているようで、実は押していない。そもそも三つ同時押ししないと開かないというわけではなく、同時押しするのは、あくまで罪悪感を誤魔化すだけのシステムでしかない。つまり、一つだけボタンを押したとしても、"アタリ"だったら、今頃は作動していた筈だ。

今回たまたま自分のボタンが"ハズレ"だったけれど、そうでなかったら、いったい……

いや、考えすぎだ。だって昨夜はあんな失礼なことをしたのに、先輩たちはちゃんと家まで送ってくれたじゃないか。

でも、あの無表情、少しずれた指先。あれは気のせいなのか。

気のせいだ。

気のせいで、あってほしい。

そう思った途端、昨夜酔っぱらってた時など比較にならないような、強烈な眩暈がやってきた。世界が崩れ落ちる。そんな感覚と共に倒れてしまいそうになったが、先輩たちは素早く体を支えてくれた。

ほら、やっぱり気のせいじゃないか。悪意があってボタンを押してないのなら、倒れるのをかばってくれるわけがないじゃないか。お礼を言おうと先輩の顔を向くと、耳元でそっと囁かれた。

「すまんな、同時押しが苦手で」
「これが問題のCDか?」

「ええ、4枚のうちの1枚ですよ」

「どんな音がするんだ?」

「これはドラムのパートだから、普通にドラム叩いてるだけ……らしいです」

「聴いてみたいんだが」

「警部、何言ってるんですかっ! これだけ被害者が出たってのにっ?」

「でもなぁ、4枚一度に再生しないと効果ないんだろ? じゃあこの1枚だけ聴いても……」

「何言ってるんですかっ! 万が一があったらどうするんですか?!」

「バンドメンバー4人がそれぞれ録音したパートを、一度に再生させた曲を聴いたら、自殺した人間がここ一ヶ月で5人も出てる。そんなこたぁニュースには流せないよなぁ」

「自分こんなオカルトじみた事を信じてるわけじゃないですけど、危険な事に首を突っ込まなくてもいいでしょ?!」

「まぁ聴きゃあ、何か手がかりが掴めるって……おおっといかん、年ばかり無駄に食ってしまって、手元がおぼつかなくてなぁ……あらまぁ、やっちまったなぁ」

「あー……割れちゃいましたね……」

「始末書もんかぁ?」

「始末書で済めばまだいいですけど、呪われたりしたらどうするんですかっ?!」

「んなこたねえって」

それから数ヵ月後。

「警部、あれから体の調子は悪くなってないですよね?」

「ああ、いつも通りだな」

「呪いにかかって自殺しやしないかと、気が気でなかったってのに、警部ときたら……」

「そんな心配してる暇があったら、事件の一つでも解決しようや。ところでお前の方こそ大丈夫か? 指の絆創膏、料理でも始めたんか?」

「いやー、最近音楽にハマっててですね」

「包丁でできたCDでも買ってきてるんか?」

「ああ、聴くほうじゃなくて、演奏する方ですよ。なんか頭の中に浮かぶフレーズがあって、なんか演奏したくなってきてたまんないんですよねー、最近」

まさか演奏してるのはドラムじゃないだろうな。

老警部はそう軽口を叩こうとしたが、こらえた。

質問しなければ大丈夫、という保証もないが、質問すれば大丈夫ではない、という保証もない。

ただ、質問しさえしなければ、これ以上は何も確定しないだろうから。
『ROOM 13』:“登場人物は男と女の2人”、“ホテルの13号室を舞台にした密室劇”、“必ずどちらかが死ぬ”、の3つをルールに13人のフランス若手映像作家が知恵の限りを尽くしたサスペンスドラマ集。


女は何度も13号室のドアまで行っては鍵をかけなおし、きちんと鍵がかかっているか確かめるためドアを引いた。かなり乱暴な扱いをされても、ドアは頑丈で開く気配もない。これなら誰も入ってこれない筈だ。思いっきりドアを蹴ってみたが、ハイヒールのかかとが折れただけだった。舌打ちしてハイヒールを両方とも脱ぎ捨てた。

女は血走った目をぎょろつかせながら部屋の中に戻り、静かに辺りを見回している。黙ってはいるが口はしっかりと閉まっておらず、醜く歪んでいる。しばらく肩で息をしつつ沈黙を保っていたが、こらえきれなくなったのか突然叫んだ。

「どこよ、どこに隠れたのよっ!」

そして耳を澄ますが、時折ホテルの外で車が走る音が微かに聞こえるだけで、辺りは静まりかえったままだった。しかし女は安心できない。そのまま黙って部屋の中でじっとし、耳に神経を集中させていた。

カタ、カタカタ……

目を見開いて金属音に目を向けると、女の右手の包丁が震えていてベッドに細かくぶつかっていただけだった。女は苦笑しつつも、このままだと包丁を落としそうだ、と思って一計を案じた。部屋の中を見渡すと、ちょうどガムテープが目にとまった。包丁をしっかり握りなおし、ガムテープを手の上から何重にも巻きつける。手の震えはまだおさまらないが、包丁を落とす心配は無くなった。

用が無くなったガムテープを置こうとして、ふと女は思いついた。左手でもっているバッグもガムテープで巻けば、より安全ではないか、と。大事なものが盗られる心配がなくなるだろう、と。自分のアイデアに満足すると、女はガムテープでバッグのふたを厳重に閉じ、左手でバッグを握る。しかしこれでも心配だ。そう思うとガムテープを口でくわえ、器用にバッグを握る左手に巻きつけ、余った部分は右手の包丁で切り落とした。

「絶対に……絶対に渡さないんだから……」

女はバッグを胸元に抱え込み、包丁と一体になった右手で包みこむ。

「なにさ、一度は親子ともども捨てておきながら、相続権があったと分かった瞬間に返せだなんて!」

辺りをみまわすと、視界の隅に人の姿があった。

「誰なのよ……そんな必死な顔をしてるからって、絶対に渡さないんだからっ!」

鏡に女自身が写っていたが、それが自分自身なのだとは認識できず、即座に包丁を叩きつけるようにぶつけていた。大きな音を立てて、鏡が割れた。

ホテルの床に散らばるのは、無数の鏡の破片。その中に写る無数の女の姿。そして無数の狂気。

鏡が粉々になって、もはや鏡としての機能が無くなったのを見ると、女は安心したのかその場に崩れ落ちた。

「はっ、このくらいですぐに居なくなるなんて、そんなにこの子が大事じゃないんでしょ?」

女は愛おしそうに左手のバッグを抱き寄せ、頬ずりを始めた。

「絶対にこの子は渡さないんだから……私だけの、可愛い息子なんだから……」

母親は頬ずりを続けた。バッグの中に隠していた息子が、窒息してしまっている事など全く気付かないまま、いつまでも、いつまでも。
子供のころにやった一番残酷なことは何か。

子供のころはわんぱくだった知人が、神妙な顔つきで話し始めた。

「小さい時でありがちなのは、蛙のお尻に爆竹を突っ込むってヤツだろうが、俺の場合は少しだけ違ったんだ」

「爆竹じゃなくて、他のものを使ったとか?」

「いや、違うのは爆竹じゃなくて、蛙の方なんだ」

「まさか、犯罪っぽい代物じゃないよな? 子供ってことはアブノーマルなプレイとかするわけないし……」

余談だが、知人は知る人ぞ知るSM愛好家だ。

子供の頃だけではなく、大人になってもわんぱくらしい。

「いやいや、俺だって子供の頃はそんな事しないって。ヒントは夏の生き物」

「蛙だって夏の生き物じゃないか。もう少しヒントはないか?」

「そうだなぁ、これ言ったら正解すれすれなんだが、うるさい生き物かな」

「蛙だってうるさい生き物じゃないか。もう少しヒントはないか?」

「わざと言ってないか? 第三ヒントは、空を飛ぶ生き物」

「ああ、蝉か」

「そう、蝉のお尻に爆竹を突っ込んだんだ」

「それだけじゃ蛙と変わらないだろう」

「蛙と違って、蝉は空を飛ぶんだ……」

知人は過去の風景を思い出したのか、陰鬱な表情になって話し始めた。

「蝉がな、爆竹をつけたまま元気良く空を飛ぶんだ。俺がそれを見上げてたら、爆竹が当然爆発したよ。太陽を逆光にして、はじけ飛んだ蝉の残骸が顔にばらばら落ちてきた時、俺はこの世にはやってはいけない事が確かにあるんだ、と思い知らされたんだ」

「こういっちゃなんだが、情操教育にいいかもしれない」

「確かに効果はあると思う。まぁPTAに反対されるだろうけどな」

将来の犯罪を抑止するために、蝉の花火を打ち上げる。そういうのもありかもしれない。じゃあ、世界平和のために60億以上の蝉と花火、それだけあれば理想郷は訪れるだろうか。

いや、無理だ。蝉ではなく人間の花火が上がるような国だって世界には沢山あるのだ。所詮は平和ボケした国の人間の戯言だ。

それに、蝉の花火で犯罪抑止になればいいが、逆に眠っていた衝動が覚醒しないとも限らないだろう。現に今、目の前に度がすぎてしまっているSM愛好家が居るではないか。子供のころ大人しくなったのではなく、違う方向に嗜虐性を見出し、巧みに隠蔽するようになった人間が、目の前に居るではないか。

「ほら、約束の品だ」

私は知人にブランデーを渡した。琥珀色の液体の底に、よく見ると人の小指が沈んでいる小瓶を。知人にとっては、爆発でなく切断するのならやってもいい事なんだろう。そういう道徳心も分からなくはない。
徹夜明けだから目が疲れているに違いない。最初にそれを見た時はそう思った。思い込もうとした。

満員電車の中、その男の周りだけ色彩がなくなっていた。色彩がなくなっているというよりも、何か黒いものがまとわりついているような感じだ。気のせいかと思ったが、なんだろうあの黒いのは、と思うと目が離せない。

早く家に帰って寝た方がいいな、と思って指で目を押さえ、再び目を開いたが黒いものは消えていない。なんだろうか、あれは。男の表情も健康的なものではなかった。世の中に絶望しているような、世の中に怒りを感じているような、そんな目つきと黒くまとわりつくものが合わさって、より一層凄みを感じる。

目を合わせづらくなって顔を背けていると、次の駅に止まった。私の職場までまだまだあるな、と思っていると視界の端を黒いものがよぎった。思わずそちらを目で追うと、あの男が駅に降りていくのが見えた。

何となくほっとして、何となく男が座っていた席を見ると、黒いものが席に残っていた。ぎょっとしてそちらを見ると、黒いものは席ではなく床からわいているようだ。床を見ると、何の変哲も無い紙袋が置いてある。さっきの男が忘れていったのだろうか。届けてあげようかと思ったが、すでに電車は出発してしまった。

これから会社だし、誰か暇な人が駅員に知らせてくれるだろう。そう思いつつ出勤した。それが良かったのかも知れない。会社で私を出迎えた受付の女の子がこう言ったのだ。

「部長が乗ってる路線で、爆発物が見つかったらしいです!」

まさかと思ってネットで調べてみると、私の乗っていた車両の可能性が高かった。まさか、いやまさか。

そしてしばらくたつと、今まで気が付いていなかったものに気づくようになってしまっていた。世の中あらゆるところに、あの黒いものは存在している。黒さにも段階があるようで、あの電車の時のような黒さにはいまだにお目にかかっていない。しかし街を歩いているとまれに黒いものに出会ってしまう。

それを抱えている人間の表情は、いつも暗く、憤っているように見える。何となく思った。あれは人の負の感情ではなかろうか、と。にこやかな笑顔の人間の周りには決して黒いものはまとわりついていなかったからだ。

最初は違和感があったが、いつしか私は黒いものに慣れてきていた。自ら危険な場所や人物に近寄らなければ、黒いものが見えることも少ないし、見えたところで直接実害は無いからだ。逆に黒いものが見えたら用心すればいい、くらいに思えてくるようになっていた。

そんなある日、会社の同僚達とゴルフに行くことになった。接待ゴルフというわけではないので気疲れはしない。たまの休日だ、リフレッシュしないと。

「ナーイスショット!」

雲ひとつ無い青空の下、皆が笑顔でスポーツを楽しんでいる。その笑顔に、あの黒いものがまとわりついている。笑顔なのに、黒いものがまとわりついている。目は笑っていて表情も明るいのに、どれもこれも黒い。あの箱の男くらい、ドス黒い。

そうか、皆そろって、他人の失敗を望んでいるんだろうな。思えば、他人が失敗するのを祈るしかない競技だしな。人知れずため息を付いた後、私は巧妙にショットを失敗する。

「ドンマーイ!」

明るい声と共に、皆の周りの黒さが少し薄らいだ。
たまの休日だから、と思い妻と二人で遠くの公園に出かけた。市内でも有数の大きな池がある公園で、多くの人々がジョギングをしたり、犬を連れて散歩をしたり、ほがらかな休日を過ごしている。そんな日常的な雰囲気の中、違和感を抱かせる風景があった。

クリックして別ウィンドゥで画像を表示

なぜ鴉が多く集まっていると、それだけで不気味に感じるのだろうか。そういった感覚的な疑問もさることながら、写真の右のやせ細った木にしか鴉がとまっておらず、左側に一羽だけ白い鳥がいるのも印象的だ。

何か禍々しいものでも生まれかねない。そんな印象を胸に秘めたまま背後を振り返り、そこに明るい日常が広がっているのを見て思った。

この世には明確な境界なぞ何処にも無い。あるとするならば我々の脳内で、あたかも境界があるように感じる、この感覚だけだ。
1 2 3 4 5 > >>
Home | PageTop | RSS2.0 | ATOM